津軽地方の中心都市・人口約15万人の弘前市。
古くからの城下町であり、洋館が立ち並ぶ文化都市でもあるこの街の都市構造は
今、大きな転換期を迎えています。
かつての中心繁華街である「土手町」と、近代的な交通結節点として発展を続ける「JR弘前駅前」。
実際に街を歩き、カメラのレンズを通して見えてきたのは
コンパクトシティの理想と、モータリゼーション(車社会)および開発の波に翻弄される
地方都市のリアルな「明暗」でした。
活況を呈する東の拠点:JR弘前駅前

旅の始まりは、弘前の表玄関であるJR弘前駅から。
現在の弘前駅舎は、ガラスを多用した近代的なファサードを持ち
駅ビル「アプリーズ(APPLIESE)」を併設した立派な橋上駅舎です。

駅前広場は美しく整備され、地方都市としては非常に洗練された都市景観を見せています。
何より驚かされるのは、この駅前周辺の「商業の厚み」です。
少し歩くだけで、地方駅前としては異例とも言える巨大な複合商業ビルが目を引きます。
それでは順にみていきましょう!

駅から歩いてすぐの所にあるロピア弘前店。
バスターミナルを併設した巨大な商業施設で
かつてはイトーヨーカドー弘前店でしたが、2024年に閉店。
地方都市では、建物は廃墟となって放置されるケースが目立ちますが
2025年に地下にロピアが開店。
無印良品、ABCマート、西松屋などの専門店が入るシーナシーナ弘前として営業しています!。

弘前駅の2階デッキから西を望むと、このロピアの赤い看板の奥に
残雪を頂く壮大な岩木山が美しくそびえ立ってます!。
都会的な高層マンションや近代的なビル群の隙間から覗く津軽の霊峰。
この「現代的な都市空間」と「圧倒的な自然」のコントラストは
現在の弘前駅前が持つ独特のエネルギーを象徴しているかのようです。

こちらはイトーヨーカドー時代
鳩の看板と残雪の岩木山の組み合わせが絵になってました!。

弘前駅に隣接する駅ビルのアプリーズ。
1982年に開業し、規模はそれほど大きくはありませんが
20店舗ほどが入居しています。
駅の2階改札階から直接出入り可能です。

さらに、駅前を5分ほど歩いた場所にはHIRORO(ヒロロ)。
元ダイエー弘前店で、2009年に閉店。
その後、2013年に「ヒロロ」へとリニューアルして再オープン!。
TSUTAYAやスターバックス、サイゼリヤなど、若者やファミリー層を吸い寄せるテナントが並び
上層階には行政機能も入る官民複合の核施設。
弘前強過ぎ‥
秋田の大館から県境を越えて、弘前へ買い物に来る人がそれなりにいるとか・・・
独自の文化を繋ぐ西の拠点:中央弘前駅と土手町の静寂

弘前駅前の活気から一転、かつて弘前の商業の心臓部であった「土手町(どてまち)」方面へと
足を延ばします。
JR駅から西へ1.5kmほど離れたこのエリアは
弘前城下町の歴史を引き継ぐ伝統的な中心市街地です。

その入り口に佇むのが、弘南鉄道大鰐線の中央弘前駅。
JR駅の近代さとは対照的に、中央弘前駅の駅舎は
昭和の香りを色濃く残すノスタルジックな木造・トタン張りの構造です。
看板に描かれた「りんご」のイラストや、レトロなフォントが旅情をそそります。

ホームに目をやると、元東急電鉄のステンレス車両(7000系)が
津軽ののどかな空気を運んできたかのように停車しています。
ホームに並ぶ巨大なこけしのオブジェが、この路線の持つ深い地域性を物語っています。

しかし、残念ながら弘南鉄道大鰐線は
2028年3月31日で運行終了、4月1日から運休扱いとなります。
書類上は「運休」「運行休止」という表現ですが
青森県や鉄道系メディアでは実質的には廃止と同じというニュアンスで説明されてます。

中央弘前駅のすぐ近く、土手町周辺のシンボルであった「ルネス街」などの駐車場看板が
寂しく残る通りを歩くと、かつての賑わいからは想像できないほど
人通りがまばらであることに気づきます。
特徴的な円錐形の意匠を持つ、かつての先進的な商業ビル「中三(なかさん)弘前店」は破綻し
2024年8月29日、突然閉店してしまいました‥。
跡地の利用は未定。
文化とアートによる「逆襲」の兆し
では、土手町・中央弘前周辺はただ衰退していくだけの空間なのでしょうか‥。
決してそうではありません。
このエリアには、駅前エリアにはない強固な「歴史と文化の蓄積」という武器があります。

その象徴が、中央弘前駅からほど近い場所に位置する「弘前れんが倉庫美術館」。
明治・大正期に建てられた国内最初の「シードル(りんご酒)」工場だった赤レンガ倉庫を改修し
2020年に現代美術館として生まれ変わったこの施設。

美しい芝生の緑に映える重厚な赤レンガの建物は
弘前の記憶を未来へと繋ぐ文化の拠点。
歴史的な建築美と最先端のアートが融合した空間が広がり
若者や観光客を引きつける新たな磁場となってます。
二極化する都市構造の中で
今回の弘前歩きで見えてきたのは、明確に二極化する都市の勢いでした。

新しく便利な「駅前」が経済のエンジンとして街を牽引する一方で
古く味わい深い「土手町」が、アートや歴史という固有の価値で街の深みを支える。
一見すると「駅前の明、土手町の暗」という単純な商業的格差に見えますが
これは地方都市が生き残りをかけて模索する「機能分担型のコンパクトシティ」の
過渡期の姿なのかもしれません。
利便性だけでは測れない、弘前という街が持つ重層的な魅力を
二つのエリアを行き来しながら強く実感した散策となりました。
(終)

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