【柏崎市】変わる街、変わらぬ海――駅前歩きに見る「新旧のコントラスト」

都市訪問記(東日本)

新潟県のほぼ中央に位置し、日本海に面した街、柏崎。
かつては北前船の寄港地として栄え、古くからの街道が交差する交通の要衝でした。
今回この街を訪れ、JR信越本線の柏崎駅を起点にその周辺を歩いてみました。
そこで目にしたのは、地方都市が抱える普遍的な課題と
それでも未来へ向かおうとする新しい息吹
そしてその狭間で揺れ動く街の「複雑な心境」でした。

旅の始まりは、日本海の潮風香る駅

列車を降り、柏崎駅のホームに立つと、どこか懐かしい潮の香りが鼻をくすぐります。
ホームには、観光列車「越乃 Shu*Kura」のしゃれた駅名標が設置されており
ここが日本酒と海を楽しむ旅の拠点であることをアピールしています。
改札を抜け、駅舎の外へ。

柏崎駅の駅舎は、2階建ての鉄筋コンクリート造り。
青い屋根の縁取りが印象的で、機能的でありながらも
どこか昭和の面影を感じさせる佇まいです。

駅前広場は広く、かつては多くのバスやタクシーが行き交い
人々であふれていたであろうことを予感させます。
しかし、一歩駅前に出ると、その広さが逆に少しの寂しさを強調しているようにも感じられました。

衰退した商店街:時間が止まった場所

駅を背にして、かつてのメインストリートである「駅前通り」へと足を進めます。

かつては、アーケードの下を家族連れや学生たちが闊歩し
威勢の良い掛け声が響いていたであろう場所。
しかし、今のその姿は写真に写し出されている通り、静まり返ってました‥。

長く続くアーケードは、強い日差しや雪を凌ぐためのものですが
今はその下の多くがシャッターを下ろしたままです。
アーケードの柱や天井はサビが目立ち、舗装された歩道もどこか色褪せて見えます。
かつてこの駅前通りには、イトーヨーカドー柏崎店がありましたが2019年に閉店。
現在の人気のない通りと、遠くに見える信号機のコントラスト。
この光景は、モータリゼーションの波や郊外型大型店舗の進出、そして少子高齢化という
日本の地方都市が共通して抱える、ある種の「終わりの始まり」のようでもありました。

ここを歩いていると、ノスタルジーという言葉だけでは片付けられない
胸が締め付けられるような切なさを感じます。
かつてここにあった「賑わい」は、一体どこへ行ってしまったのだろう‥
ここで商いをしていた人たち、ここで育った人たちの思いは、どこへ消えてしまったのだろう‥
そんな答えのない問いが、頭をよぎります。

企業が進出した駅前:未来を紡ぐ新しい力

しかし、柏崎駅前はただ寂れているだけではありません。
複雑な心境に拍車をかけるのが、その商店街のすぐ近くに全く異なる風景が存在していることです。

その象徴が駅前にそびえ立つ近代的なビルです。
これは柏崎市に本社を置く日本を代表する菓子メーカー、ブルボンの本社ビルです。
グレーのシャープな外観と、ガラス張りのスタイリッシュなデザイン。
その足元には、アーチ型のオブジェが配された綺麗な植栽があり、都会的な洗練さを感じさせます。
このビルの存在は、柏崎という街が依然として経済的な拠点であり
未来へ向けて投資が行われている場所であることを雄弁に物語ってます。
老朽化した商店街のすぐそばに、このような最新鋭のオフィスビルが立っている。
そのギャップに筆者は不思議な感覚に捉われました。

さらに、駅のすぐ近くには立派な柏崎市役所もあります。
こちらも、ガラスを多用したモダンな建築で、行政がこの街の再生にかける意気込みを感じさせます。
周辺には地元企業の本社も移転してきており、拠点性が一気に高まってきています。
そして、市役所の向かいでは東横インを核とした複合施設の建設が開始され
2028年の開業を目指してます。

柏崎の「複雑な心境」に触れて

衰退した商店街と、企業が進出した近代的な駅前。
この二つの風景は、今の柏崎が抱える引き裂かれたような複雑な心境そのものであるように思えます。

古い商店街のシャッターは、守れなかった過去への悔恨や
変われなかったことへの諦めを象徴しているのかもしれません。
一方、ブルボンのビルは、それでもこの街で生きていくという強い意志や
新しい価値を創造しようとする希望を象徴しているのかもしれません。
古いビルに掲げられた「わか菜」という居酒屋の看板と、その背後に立つ「ホテルα-1」のロゴ。
この、新旧が入り混じった混沌とした風景こそが、今の柏崎の姿なのだと思います。

街歩きの最後に、駅の中にある自動販売機でブルボンの「プチ」シリーズを買いました。
プチクマのキャラクターが描かれた、カラフルで可愛らしい自販機。
この小さなお菓子の一つ一つが、この街の大きなビルで企画され、全国へと届けられている。
そう思うと、少しだけこの街の未来が明るいものであるように感じられました。
柏崎駅前
そこは、失われた賑わいへの未練と、新しい未来への期待が複雑に交差する場所でした。
この街がこれからどのような道を歩んでいくのか。
その行方を数年後、また見に来たいと思います。
(終)

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